株式会社エービーシー・マート(ABC-MART)とは?まず要点
駅前を歩いていると、必ず目に入る黄色いロゴ。ABC-MARTは、街で最も身近な靴屋さんかもしれません。
株式会社エービーシー・マートは、1985年創業の靴専門店チェーンの国内最大手。国内約1,000店舗、海外(韓国・台湾・タイ・米国)で約400店舗を展開し、ナイキ・アディダス・ニューバランス・コンバースといった世界的スポーツブランドから、自社ブランド(HAWKINS・NUOVO・CIPOLINI)、さらに**「ハワイアナス」「VANS」の独占輸入**まで、幅広い商品ラインを抱えています。
財務の面から見ると、ABC-MARTは**「隠れた超優良企業」**の代表格です。ROE約11.7%・ROA約10.2%・実質無借金経営という、東証プライムの中でも有数の高収益・低負債体質を維持しています。4期連続増収・連続増益・連続増配を達成しており、配当利回り3%で配当狙いの長期投資家からも支持されています。
地味な業態ですが、「靴は一定数売れ続ける」という構造的需要を、SPA(製造から販売までを自社でおこなうモデル)(製造小売)モデル × 立地戦略 × 価格競争力で押さえているのが、この会社の強さの正体です。
どんな事業をしているの?
ABC-MARTのビジネスは、シンプルに**「靴・履物の専門小売」**に集約されます。ただし、その内側にはいくつもの戦略レイヤーが組み込まれています。
① ナショナルブランドの強み
ナイキ・アディダス・ニューバランス・コンバース・PUMA・ASICSといった世界・海外定番ブランドを、駅前・ショッピングモール・ロードサイドの幅広いチャネルで提供。**「行けば必ず欲しいブランドがある」**という安心感が、リピート顧客を生んでいます。
② 自社オリジナルブランド
HAWKINS(ホーキンス):英国生まれのレザーシューズブランドを買収し、自社ブランドとして展開。
NUOVO(ヌォーボ):レディース向けカジュアル。
CIPOLINI(チポリーニ):トラベル系シューズ。
これらの自社ブランドは利益率が高く、ABC-MARTの収益性を支えています。
③ 独占輸入のヒット商品
ハワイアナス(ハワイアナス・ビーチサンダル)、VANS(バンズ・スニーカー)などの独占輸入権を持っており、他店では買えないブランドとして差別化を図っています。
④ 海外展開
韓国(300店舗超)、台湾(70店舗超)、タイ・米国にも進出。「日本のABC-MART」から「アジアの靴チェーン」への事業規模の拡大を継続しています。
ABC-MARTを一言で表すなら、「ナショナルブランド × 自社ブランド × 独占輸入の三段構え」。仕入れの規模で価格競争力を確保しつつ、自社ブランドで利益率を取り、独占商品で差別化する――この設計の巧みさが、長期にわたる高収益の正体です。
業績の推移(過去3期+次期予想)
株探の公開データをもとに、業績推移を整理しました(単位:百万円)。
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 1株益 | 1株配 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2024年2月 | 344,197 | 55,671 | 57,834 | 40,009 | 161.6円 | 65.33円 |
| 2025年2月 | 372,202 | 62,550 | 64,618 | 45,358 | 183.2円 | 70円 |
| 2026年2月 | 378,624 | 63,287 | 67,156 | 46,346 | 187.2円 | 75円 |
| 2027年2月(予) | 400,800 | 65,600 | 67,400 | 46,400 | 187.4円 | 80円 |
何が起きているのかを、3つの角度から読み解きます。
① 連続増収・連続増益のトレンド
売上高は3,442億→3,722億→3,786億→(予)4,008億と4期連続増収。営業利益も4期連続で増益しており、**「派手さはないが、毎期確実に積み上げている」**のがABC-MARTの実態です。コロナ禍で一時減速した時期もありましたが、外出回復と価格改定でキレイに戻しています。
② 高収益体質の維持
営業利益率は16〜17%で安定推移。靴小売業としては異例の高水準です。これを支えているのが、自社ブランドの利益率の高さと、仕入規模による価格交渉力。「同じナイキを売っているのに、ABC-MARTの利益率は他社より高い」――これは決算書を読み込むと見えてくる、地味だが本質的な強みです。
③ 連続増配の継続
1株配当は65.33円→70円→75円→(予)80円と、毎期増配を実現。配当性向は40%程度で、無理のない範囲での累進配当が続いています。業績悪化時にも配当を守れる体力は、実質無借金経営の財務余裕から来ています。
ABC-MARTが今、挑戦していること
公式IRから読み取れる範囲で、ABC-MARTの中期テーマを整理します。
① 海外展開の拡大
韓国に次いで台湾・タイ・米国でも段階的に出店を加速。アジアの中流層拡大に合わせた**「日本クオリティの靴専門店」**としての立ち位置を進めています。
② デジタル戦略
オンラインショップ・ABC-MARTアプリの強化、店舗とECの在庫連動など、実店舗とネットの連携化を継続。「靴は試し履きが大事」という業界特性を活かしながら、ECの利便性とリアル店舗の強みを両立させようとしています。
③ サステナビリティ
包装素材の再生材活用、店舗の省エネ化、ダイバーシティ&インクルージョンなどのESG(環境・社会・ガバナンスへの配慮)取り組みを推進。靴の修理・引き取りプログラムといった循環型経済への関与もあります。
具体的な中期数値目標、新業態の最新戦略、海外出店計画の詳細については、同社IRページの最新IR資料(決算説明会資料・統合報告書)を直接ご覧ください。
主要な財務指標(初心者向けに丁寧に)
主要な株価・財務指標は次の通りです(2026-04-30時点・公開データより)。
- 時価総額:6,606億円
- PER:14.24倍
- PBR:1.66倍
- 配当利回り:3.00%
- ROE:11.66%
- ROA:10.19%
- 実質無借金経営
各指標がどんな意味を持つか、初心者向けに整理します。
PER(株価収益率)
計算式:株価 ÷ 1株あたり利益。日本株の中央値は15倍前後。ABC-MARTの14.24倍はほぼ標準水準で、**「業績が安定しているが、急成長期待は控えめ」**な位置づけです。
PBR(株価純資産倍率)
計算式:株価 ÷ 1株あたり純資産。1倍を割ると「解散価値以下」と言われる水準で、ABC-MARTの1.66倍は資産効率の高さを評価された水準。ROAが高い会社のPBRは1倍を超えるのが自然で、それが体現されています。
配当利回り
**3.00%は、東証プライム平均(約2%)を上回る水準。「成長性は控えめだが、配当もそれなりに出る」**バランス型銘柄の代表的な数字です。連続増配の継続により、**長期保有での「実質利回り」**は時間とともに改善する可能性があります。
ROE(自己資本利益率)
計算式:純利益 ÷ 自己資本。**日本企業の中央値は8〜10%で、11.66%は十分な高水準。ROAも10%超で、「資産・自己資本ともに効率的に利益を生み出している」**会社であることが分かります。
実質無借金経営
有利子負債より現預金の方が多い状態。業績悪化や金利上昇に対する強い耐性を意味し、長期保有の安心材料として機能します。
まとめ:ABC-MARTを見るときの3つのポイント
- 靴専門店の国内最大手 × 高収益SPA(製造から販売までを自社でおこなうモデル)モデル。ナショナルブランド・自社ブランド・独占輸入の三段構えで、地味だが盤石な収益基盤
- 4期連続増収・増益・増配。派手さはないが、毎期積み上げる姿勢こそが「隠れた優良株」の証
- ROE約12% × 実質無借金 × 配当利回り3%。成長と安定を両立する、長期保有向きの銘柄プロファイル
会社のことを知る、というのは、決算書を一緒に読むことでもあります。ABC-MARTの決算短信や有価証券報告書は、ネット証券の口座があれば誰でも無料で読めます。
データ出典
- 株探(取得日:2026-04-30) https://kabutan.jp/stock/finance?code=2670
- IR Bank(取得日:2026-04-30) https://irbank.net/2670
- 株式会社エービーシー・マート 公式IRページ https://www.abc-mart.co.jp/corp/ir/
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※本記事は公開情報に基づく企業紹介であり、投資助言ではありません。投資判断は読者の自己責任でお願いします。