配当金は、黙っていても口座に入ってくるのか

決算の数字を読めるようになると、次に気になるのが配当です。会社が稼いだ利益の一部を、株主に配る仕組みですね。

ところが調べ始めて、私は最初の一歩でつまずきました。

「配当金って、どうやって受け取るんだろう」

銀行の利息のように、勝手に振り込まれるものだと思っていました。実際は違って、受け取り方をこちらが選ぶ仕組みになっています。しかも、その選び方によって税金の扱いまで変わります。

この記事では、配当金がいつ・どうやって手元に届くのか、そして避けて通れない税金の基本を整理します。

なお当サイトは、特定の銘柄をすすめる場所ではありません。仕組みの話に絞ります。

いつもらえるのか

まず時期の話です。ここは優待とほぼ同じ考え方になります。

会社が株主名簿を締める日に株主だった人が対象になり、その日から数か月後に支払われるのが一般的です。株主総会での承認を経て支払われる形が多いため、すぐには届きません。

「買ったのに入ってこない」と感じるのは、たいていこの時間差が理由です。締切の日の数え方は株主優待はいつ買えばもらえる?に書いた考え方がそのまま使えます。営業日で数える点も同じです。

年に2回支払う会社もあれば、年1回の会社もあります。金額も回によって違うことがあるので、年間の合計で見るのが実態に近くなります。

受け取り方法は4つある

ここが最初の分かれ道です。証券口座を開くときに選択を求められるのですが、意味が分からないまま進んでしまう方が多いところだと思います。

方法 どこで受け取るか
株式数比例配分方式 保有している証券口座に入金される
登録配当金受領口座方式 指定した銀行口座に、すべての銘柄分がまとめて振り込まれる
個別銘柄指定方式 銘柄ごとに振込先の銀行口座を指定する
配当金領収証方式 郵送された書類を持って、郵便局などの窓口で受け取る

どれを選ぶべきか

結論から言えば、多くの方には1番目が無難です。理由は次の項目にあります。

4番目は、書類が届いてから自分で窓口へ行く必要があります。受け取り忘れると期限切れになることがあるため、あえて選ぶ理由は薄いと感じています。

3番目は銘柄ごとに指定できますが、保有数が増えるほど管理が煩雑になります。

税制優遇の口座を使うなら、方式の選択が効いてくる

ここが今日いちばんお伝えしたい実務の話です。

税制優遇のある口座で株を買った場合、配当も非課税の対象になります。ところが、受け取り方法を1番目にしていないと、その恩恵を受けられないという決まりがあります。

つまり、せっかく非課税の口座で買っていても、受け取り方の設定を間違えると税金が引かれてしまうということです。

さらにややこしいのが、この設定は証券会社ごとではなく、保有しているすべての口座に共通で適用される点です。複数の証券会社を使っている場合、片方だけ別の方式にする、といったことはできません。

私はここを知らずに口座を開いていました。後から設定を確認して直しましたが、気づかなければ何年も損をし続けるところでした。開設のときにひとつだけ確認するなら、ここです。

配当にかかる税金の基本

経理の仕事柄、ここは避けて通れないので整理します。

上場している会社の配当を受け取ると、受け取る前に税金が差し引かれます。所得税と住民税を合わせた税率が適用され、いわゆる源泉徴収の形です。手取りは、公表されている金額より少なくなります。

「1株あたり50円の配当」と書かれていても、そのまま50円が入るわけではない、ということです。

何もしなくても手続きは完了する

差し引かれた時点で納税は済んでいるため、原則として確定申告は不要です。ここは給与から源泉徴収されているのと似た構造になっています。

多くの方は、これで完結します。

あえて申告する選択肢もある

ただし、申告したほうが有利になる場合があります。代表的なのは次の二つです。

ひとつは、株の売買で損失が出ている場合です。配当と損失を相殺できる制度があり、差し引きすることで納めすぎた分が戻る可能性があります。

もうひとつは、所得の水準によっては別の課税方法を選んだほうが有利になる場合です。配当については税額を調整する仕組みが用意されています。

ただし、これらを選ぶと他の制度に影響が出ることがあります。どちらが有利かは所得の状況で変わるため、判断は税務署か税理士に確認してください。 ここは記事で断言できる部分ではありません。

経理を長くやってきた立場で言えば、有利不利の計算は「その人の全体像」を見ないと出せません。一般論で決め打ちするのがいちばん危険な領域です。

配当利回りという物差しと、その落とし穴

配当を語るときによく出るのが、株価に対する配当の割合です。これは便利ですが、鵜呑みにすると危険な指標でもあります。

数字が高いとき、何が起きているか

割り算なので、分母である株価が下がれば数値は上がります。つまり数字が魅力的に見える瞬間は、市場がその会社の評価を下げている最中かもしれません。

高い数字を見つけたら、まず「なぜ高いのか」を確かめる。これが順番だと思っています。

過去の実績か、今期の予想か

公表されている数値が、すでに支払われた実績なのか、これから支払う予定なのかで意味が変わります。予想は変更されることがあります。

配当は減ることもやめることもある

いちばん大事な点です。配当は会社の判断で減らすことも取りやめることもできます。約束された利息ではありません。

業績が悪化すれば、配当が減り、株価も下がる。両方が同時に来るのが、配当を目的に買ったときの典型的な失敗の形です。

支払う余力があるかを、どこで見るか

では、続けられそうかをどう確かめるか。私が見ている観点を挙げます。

利益に対して、どのくらいを配当に回しているか。 稼ぎのほとんどを配っている状態は、余裕があるとは言えません。少し業績が落ちるだけで維持できなくなります。

手元の現金がどう動いているか。 利益が出ていても、現金が入ってきていなければ配当は続きません。利益と現金は別物だというのは、経理の現場で何度も実感してきたことです。

これまでどう対応してきたか。 業績が苦しい局面でどうしたか、という履歴は参考になります。ただし過去の実績は約束ではありません。

数字の見方そのものは決算短信で最初に見る5つの数字にまとめました。配当を見るときも、結局は本業の数字に戻ってきます。

私がつまずいた勘違い3つ

自分の失敗を並べます。

利息のようなものだと思っていた。 銀行の預金と違い、金額は変わりますし、ゼロになることもあります。性質がまったく違いました。

公表された金額がそのまま入ると思っていた。 税金が引かれるので、手取りは少なくなります。年間の収支を考えるときは、手取りで計算しないと合いません。

受け取り方法の設定を確認していなかった。 前述のとおり、税制優遇の恩恵に直結します。開設したまま放置している方は、一度見ておく価値があります。

口座の開き方そのものは証券口座はどこで開く?に整理しました。

「配当の分だけ株価が下がるなら、意味がないのでは」

調べていて、私が引っかかった疑問です。締切を過ぎると、その分の価値が抜けて値が下がる。だとすれば、受け取っても差し引きゼロではないか、と。

理屈としては、そのとおりの側面があります。ただ、いくつか補足が要ります。

まず、値が抜けるのは締切を過ぎた瞬間の話で、その後の株価は業績や市場全体の動きで上下します。抜けた分がそのまま戻らないと決まっているわけではありません。

次に、受け取った側には現金が残るという違いがあります。株のまま持っているのと、一部が現金になっているのとでは、性質が変わります。使うこともできれば、別のものに回すこともできます。

そして忘れてはいけないのが、受け取った時点で税金が引かれていることです。ここを無視して「実質同じ」と考えると計算が合いません。

だから私は、締切をまたぐかどうかを目的にした売り買いはしない、と決めました。数日の値動きを当てにいく行為になりますし、そこは自分の得意な領域ではないと判断したからです。

受け取ったお金を、どう扱うか

入金されたあとの話は、意外と語られません。選択肢は大きく二つです。

そのまま生活に使う。あるいは、また別の株や投資信託に回す。どちらが正しいという話ではなく、何のために株を持っているのかで決まります

私が気をつけているのは、受け取った金額を「増えた分」と誤解しないことです。株価が下がっていれば、全体としては減っていることもあります。配当の入金通知だけを見て判断すると、実態を見誤ります。

家計の管理と同じで、部分ではなく全体で見る。経理の癖かもしれませんが、この視点は持っておいて損はないと思っています。

記録として何を残しておくか

最後に、実務的な話をひとつ。

証券会社からは、年間の取引や配当をまとめた書類が発行されます。これは捨てないでください。 申告が必要になった場合はもちろん、自分の実績を振り返るときの元資料になります。

私自身は、銘柄ごとに受け取った金額を年単位で残しています。特別な道具は使わず、表計算のファイルに一行ずつ足していくだけです。

続けていると、公表されている数字と、自分の手取りの差が体感で分かるようになります。この差を知っているかどうかが、配当を扱ううえでの現実感につながると感じています。

証券口座があれば、配当の実績や受け取り方法の設定を、実際の画面で確かめられます。▶ 日本株を始めるなら【DMM 株】!(PR)

まとめ

要点を並べ直します。

  • 締めの日に株主だった人が対象。実際に支払われるのは数か月先になることが多い
  • 受け取り方は4通りあり、証券口座に入金される方式が管理の面では扱いやすい
  • 税制優遇の口座で非課税の恩恵を受けるには、証券口座で受け取る方式にしておく必要がある。しかもこの設定は全口座に共通で適用される
  • 受け取る前に税金が差し引かれるため、原則として申告の手続きは要らない
  • 売買で損失が出ている場合など、あえて申告すると有利になることがある。ただし判断は専門家に
  • 株価に対する割合は便利な物差しだが、分母が下がっても数値は上がる。高い理由を先に確かめる
  • 配当は減額も取りやめもあり得る。約束された利息ではない
  • 続けられるかは、利益に対する配分の重さと、現金の動きから読む

配当は、持っているだけで受け取れる分かりやすい仕組みです。だからこそ、金額の大きさだけで判断すると足をすくわれます。私はここを、本業の数字とセットで見るようにしています。

繰り返しになりますが、当サイトが扱うのは会社の読み解き方です。何をいつ買うかの判断は、あなた自身の手で行ってください。