「普通の口座」と何が違うのかが分からなかった
証券口座の開き方を調べていると、必ずもう一つの選択肢が出てきます。税制の優遇を受けられる口座です。
「使ったほうがいい」とはどこにも書いてあります。ところが私が知りたかったのは、そこではありませんでした。
普通の口座と何がどう違って、開くと何が起きるのか。
この記事では、その差だけを整理します。制度の細かい数字は改正で変わりますし、金額の条件は各社の案内や公的な情報で確認していただくのが確実です。ここでは仕組みとして何が違うのかに絞ります。
なお当サイトは、特定の銘柄や会社をすすめる場所ではありません。
唯一にして最大の違いは、利益に税金がかからないこと
先に結論を書きます。違いは実質これだけです。
普通の口座では、株を売って利益が出ると税金が差し引かれます。配当を受け取るときも同じです。ところが優遇のある口座では、その分がかかりません。
つまり、同じ会社の株を、同じ値段で買って、同じ値段で売っても、手元に残る金額が変わります。
私が最初に理解できていなかったのは、これが「もらえる」制度ではなく「引かれない」制度だという点でした。得をするというより、本来引かれるものが引かれないという形です。
引かれないのは、利益が出たときだけ
ここは押さえておく必要があります。損をしたときには、何の優遇もありません。
むしろ、あとで触れますが損をしたときに不利になる場面があります。 良いことばかりの制度ではない、という理解が要ります。
開設するときに知っておきたい三つのこと
一人ひとつしか持てない
これが普通の口座といちばん違う点です。証券会社をまたいで複数持つことはできません。
金融機関を変えることはできますが、手続きに時間がかかります。最初に選んだところと長い付き合いになりやすい、というのが実務的な感覚です。口座そのものの選び方は証券口座はどこで開く?にまとめました。
手続きに時間がかかる
普通の口座より、開設までに日数がかかります。制度上、二重に持っていないかを確認する必要があるためです。
「今日開いて今日買う」という進み方にはなりにくい、と考えておいてください。
使える枠には上限がある
無制限に非課税になるわけではありません。1年間に投資できる金額に上限が決められています。
具体的な金額は制度の改正で変わるため、必ず最新の公的な案内で確認してください。ここで数字を書いても、読む時期によっては古くなります。
見落としやすい落とし穴
私が調べていて「知らなかったら損をした」と感じた点を挙げます。
損失を他の口座と相殺できない
普通の口座どうしなら、片方で出た損失を、もう片方の利益と差し引きできる仕組みがあります。ところが優遇のある口座で出た損失は、その計算に持ち込めません。
つまり、損をしたときには普通の口座より不利になり得ます。ここが「良いことづくめ」ではない部分です。
経理の感覚で言えば、優遇を受ける代わりに、通常の計算の枠から外れているということです。外れている以上、有利な扱いも不利な扱いも両方あります。
配当の受け取り方を間違えると非課税にならない
これはぜひ確認していただきたい点です。配当を非課税で受け取るには、受け取り方法を証券口座で受け取る方式にしておく必要があります。
しかもこの設定は、持っているすべての証券口座に共通で適用されます。詳しくは配当金の受け取り方に書きました。
私はここを知らずに開設していました。気づかなければ、非課税の口座を使いながら税金を引かれ続けるところでした。
枠は使い切っても、売れば戻るとは限らない
年間の枠は、その年ごとに区切られています。制度の仕組みによって扱いが違うため、売却したら枠がすぐ復活するとは限りません。
ここも改正で変わる部分なので、公的な案内を確認してください。「一度使ったら終わり」と考えておくほうが、計画を立てやすいと思います。
名義をどう考えるか
家族の分も含めて枠を使えばいい、という話を見かけます。ここは慎重に考えたほうがいい部分です。
制度上、口座はその本人のものです。名義だけ借りて、実質的に別の人が運用するという形は、税務の扱いで問題になり得ます。
経理をやっていると、名義と実態がずれている状態がいちばん厄介だと分かります。あとから説明を求められたときに、説明できる形にしておく。 これは会社のお金でも家庭のお金でも同じです。
家族それぞれが自分の判断で口座を持つのは、もちろん問題ありません。違うのは「誰の判断で、誰のお金か」がはっきりしているかどうかです。
途中で金融機関を変えたくなったら
使ってみて不満が出ることはあります。変更は可能ですが、いくつか制約があります。
手続きに時間がかかること、そして変更できる時期が決まっていることです。思い立った日にすぐ移せるものではありません。
さらに、それまでに買ったものは元の金融機関に残ります。移した先へ丸ごと引っ越すわけではないので、口座が二か所に分かれる形になります。管理の手間はそのぶん増えます。
だから最初の選択がある程度重いのですが、逆に言えば完璧を求めて選べないまま何年も過ぎるほうが損だとも思います。私は「まず開く」を優先しました。
私が決めた順番
最後に、実際にどう進めたかを書きます。
- 普通の口座を先に開いて、画面に慣れる。銘柄を検索して、決算の数字を追ってみる
- 優遇のある口座を申し込む。日数がかかるので、慣れているあいだに手続きだけ進める
- 配当の受け取り方の設定を確認する。ここを飛ばすと非課税が効かない
- 買うものを決めるのは、いちばん最後
3番を2番の直後に置いているのが要点です。開設して満足してしまうと、この設定を確認しないまま何年も過ぎます。
そして4番。制度を整えることと、何を買うかは別の作業です。順番を守ると、焦って決めずに済みます。
経理の目線:この制度をどう位置づけるか
私はこれを、入れ物の話だと考えています。
中身を選ぶこととは別の話です。優遇される口座に入れたからといって、その会社が良くなるわけではありません。入れ物を整えても、中身の選び方が変わらなければ結果は変わりません。
だから順番としては、まず会社の数字を読めるようになること。そのうえで、買うと決めたものをどの入れ物に入れるかを考える。この順番を逆にすると、制度の話に時間を使って肝心の判断がおろそかになります。
数字の読み方は決算短信で最初に見る5つの数字に、会社の評価の見方はPERとPBRって何?にまとめました。
それでも、開けるなら開いておく理由
慎重なことを書いてきましたが、私自身は「使える人は使ったほうがいい」と考えています。
理由は単純で、開設そのものに費用がかからないからです。開いておいて、使わない年があっても損はしません。
判断が要るのは「開くかどうか」ではなく「何をいくら入れるか」のほうです。入れ物は先に用意しておいて、中身はゆっくり決める。 これが私の順番でした。
証券口座があれば、制度の枠と実際の銘柄を同じ画面で見比べられます。▶ 日本株を始めるなら【DMM 株】!(PR)
まとめ
要点を並べ直します。
- 違いは実質ひとつ。利益と配当にかかる税が引かれない
- お金が支給される仕組みではなく、差し引かれるはずのものが差し引かれない仕組み。負けた年に恩恵はない
- 一人ひとつしか持てず、金融機関の変更には手間と時間がかかる
- 開設までの日数は普通の口座より長い。すぐ買いたい場面には向かない
- 年間に入れられる金額には上限がある。数字は改正で変わるので公的な案内で確認する
- 他の口座と損失を相殺できない。負けたときはむしろ不利になり得る
- 配当を非課税で受け取るには、受け取り方法の設定が必要。ここは見落としやすい
- 制度は入れ物の話。中身を選ぶ力が伴わなければ結果は変わらない
- 開設に費用はかからないので、使える人は先に用意しておく価値がある
制度の名前を覚えることより、普通の口座と何が違うのかを一言で言えることのほうが役に立ちました。
繰り返しになりますが、当サイトが扱うのは会社の読み解き方です。何をいつ買うかの判断は、あなた自身の手で行ってください。税の取り扱いで迷う場合は、税務署か税理士にご相談ください。